まだ、丘陵の峰々は、のこぎりの刃のように、鋭い黒い姿を見せていた。そして、明けきらぬ空模様は、晴れるのか、曇りになるのか、定まらなかった。薄暗い林の中に入って行くと、被っていた帽子に、ポチンと、ドングリの実が当たった。また少し歩くと、ポチンと音を立てた。そして、足元に転がっているドングリを踏むたび、パチン、パチンと音を上げる。歩くつま先からは、サクサクと乾いた音を立てる枯葉、サクサク、パチン、サクサク、パチン、そして、頭上から、ポチン、なにか、リズミカルに、繰り返す音は、音楽になっていた。歩くたびに、足元から、曲が流れ、鼻歌まで誘われる。仕舞いには、声を上げて、即興に作った唄を歌う。本音は、薄暗い林の中を歩く、心細さを吹き飛ばしているのだ。森を抜けたところで、マムシ草の、毒々しい、真っ赤な果実を見つけた。≪マムシ草≫は、地下の芋(塊茎)に栄養を蓄える多年草で雌雄異株です。一定の大きさになるまで何年間かは葉だけであり、花をつけられません。ある程度塊茎が大きくなってくると、まず雄花をつけます。さらに何年かして、十分塊茎に栄養をため込んだ後は、雌花をつけることができます。
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