森閑とした早朝、音もなく流れる朝霧は、目の当たりにする、すべてのものを、覆い隠してしまっていた。襞の様に幾重にもうねる丘陵の姿は、手前から黒、群青、青、水色と影を作っていた。その頂の上に、一点の光明が現れ、その後ろに円形の雲を頂くその姿は、さながら、真ん中に、ダイヤが輝く、エンゲージリングのように見えた。こんなに大きな指輪を頂けるのは誰なのだろうと想像をしてしまう程、メルヘンの世界にあった。朝霧は、容赦なく私の体から、体温を奪って行き、指先の感覚まで無くしてしまうほど、非情なものだった。丘陵の中腹にある東屋に着く頃には、太陽は、はっきり姿を見せ、朝霧は、薄れ、その姿を消し始めていた。
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