谷津田に囲まれたヒツジダの真ん中を、農業用水路だけが、不気味に光って、帯のように東に向かって伸びていた。谷津田の懐は深く、まだ、薄暗く終点が見えない。溝に落ちないように気を付けながら、用水路の縁を歩いていく。進むにつれて、東の空が明るくなり、丘陵の上に聳えたつ、高圧線の鉄塔に陽が当たりぬっくと、その姿を見せた。そして、白黄色に染まった空を、白く刳り抜いたかと、錯覚を起こさせるような形で、鈍い光を放ちながら太陽が現れた。谷津田の中が明るくなり、闇の世界から目覚めた白セキレイが飛んで来て、水路の淵に止まり、自分の姿を水面に映して、しげしげと見入っていた。鳥は、自分の姿を見て、どう感じているのだろうか。日向になっている場所では、すでにコブシが、綿毛に覆われた蕾を付けていた。
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