雲が低く垂れ込めていた明け方、色彩の無いモノクロの世界が目の前に広がり、空のほてりが、水田に反射して、一枚の水墨画が描かれていた。この風景画の中に、もし、物音一つなかったとしたら、寝床の中で微睡み、まだ、夢の世界だと錯覚を起こし兼ねなかっただろう。早起きのカエルたちは、既に目覚め、お日様の出番を促して、賑やかなエールを送っていたが、その願いは、叶いそうも無く、降りしきる雨に、期待が持てなかった。目の前の、水墨画をめくるたび、徐々に景色は、水彩画に変わって行った。雲は、さらに不安な色を深め、漆黒の闇に包まれていた丘陵は、雨に滲む深緑に染められていた。田んぼの底に埋まっていた川の流れは、雨で増水し、下流に向かって驀進していた。花たちは、開花することも叶わず、雨に打ちひしがれていた。それにしても、水墨画を、水彩画に塗り替えて行った自然は、凄腕の画家だった。
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