すべての条件はそろった。曇り空の下、常緑樹に囲まれた、モノトーンの丘上舞台、染井吉野は、大きく袖を広げ、幽玄の世界の中、能を舞うように、その姿を現した。残念ながら観客は、我一人、存分にその舞う姿を堪能しよう。静寂の中、時々聞えて来る、ウグイスの鳴き声は、鼓を打つ、役割をはたした。恐ろしいほど、枝一杯に花を付け、妖しいまでに、我が心を奪い、その身の内に引き込んでゆく、妖麗な姿に身の毛のよだつ思いがした。我が世の春を謳歌する、桜花の運命は儚く、花に嵐の喩えあり、この時期に、風雨が強く襲い掛かる、気候変化の激しい時期に当たるようだ。その短い命に、人は惜しみなく、称賛するのだろう。
スポンサーサイト
トラックバック
http://1228coffee.blog.fc2.com/tb.php/819-d7115b19
| ホーム |